絵本 地獄
千葉県安房郡三芳村の延命寺に所蔵されている十六幅の地獄絵巻をもとに構成されたこの絵本は、ページを繰るごとにおぞましい地獄絵図が広がり、罪人の行くべき死後の世界の想像を絶する辛さ、悲しさ、狂うほどの後悔、恐ろしさ…を思い知らされます。
死にたくない! 地獄は怖い!!
恐ろしいものを見てしまった!
恐ろしいことを知ってしまった!!
この絵本から伝わってくるのは、圧倒的で絶対的な死への恐怖です。「死ぬことはこわいことだ」ということを強く心に刻むことでしょう。
何度倒れてもリセットすれば生き返るゲームの中のヒーロー・「死ね!」「ぶっ殺す」等を笑いながら平気で言うテレビの中の大人たち…現代社会において、生命の扱いがあまりにも軽すぎるような気がしてなりません。「死の怖さ」を知らずして「生命の尊さ」をとらえることが可能でしょうか?
昔の人々が地獄図を子供たちに見せ、「死の怖さ」を語り、人の世の善悪・道徳を説き、生への執着心を育み、生きることの素晴らしさ・生きることの喜びを伝えていたように、今を生きる私たちも光り輝く未来へバトンを繋げていくべきではないでしょうか。
死を恐れない子供たちが未来を司るとしたら、まさにこの世は地獄になることでしょう。そうならない為にも、是非、目をそむけずに読んでほしい絵本です。
宮次男 監修