世界で一番の贈りもの
切なさに心が震えて涙がこぼれおちる…。
いつも、この絵本を読むとそうなんです。どうしてかなぁ…。
秘密の引き出しで見つけた一通の手紙。
第一次世界大戦の最前線で戦う兵士・ジムが妻にあてて書いたその手紙には、信じられないような出来事が記されていました。
戦場で迎えるクリスマス。
凍てつく大地に身を潜める両軍の兵士たち。
と、その時…。
「メリークリスマス,エゲレスさんよぉ!クリスマス、お・め・で・とぉー!!」
「こっちからも、メリークリスマス!ドイツ野郎!!」
その後に続く奇跡。夢のような時間。
交換しあったタバコをふかし、笑いあい、語り合い、酒を酌み交わし、食べ物を分かち合う兵士たち。
前線の無人地帯のど真ん中でのサッカー試合。
そう。兵士たちは1人残らず、平和を願っている…。
この戦争が終わって、みんなが故郷へ帰れるようにと…。
1914年のクリスマス休戦について、軍の公式記録は存在しません。戦場の最前線で自然発生的に生まれた非公式の休戦だったためです。
けれど、兵士たちが様々なかたちで、この信じられないような体験を家族や友人に伝えたことから、いくつものエピソードが伝説のように語り継がれていくことになったのです。
この物語は、心温まる素敵な物語だけど…めでたし、めでたし、じゃない。
ジムは帰らなかった。
ジムは帰れなかった。
妻は孤独の中、帰らぬ夫を待ち続けた。
妻は孤独の中、この手紙だけを支えに、帰らぬ夫を待ち続けた。
みんな平和を願ってるのに…。争うことは間違ってるって知ってるのに…。
満たされぬ平和への願いが、戦争への激しい憤りが、私の涙腺を揺さぶるのかもしれないなぁ…。
毎年、ヒロシマの鐘を聞きながら、クリスマスキャロルを聞きながら、何度も何度も読み返す大切な大切な絵本です。
「世界で一番の贈りもの」
マイケル・モーパーゴ(作) マイケル・フォアマン(画) 評論社