版画 のはらうた
「のはらうた」って、ご存知ですか? のはらのみんなが作った詩を代理人の「くどうなおこ」さんが書き留めて詩集にした、という設定の小さな詩の本です。
カルタや絵本など、色々な形で出版されているのですが…今日は、私が持っている「版画 のはらうた」をご紹介致します。
のはらにいるみんなの、伝えたい気持ち、熱い思い、つぶやきが、リズミカルな牧歌として歌われているのですが、楽しいことに、のはらのみんなには、とても素敵な名前があるのです。
風の「かぜみつる」君。スミレの「すみれほのか」さん。雲の「わたぐもまさる」君。「かまきりりゅうじ」君。「にじひめこ」さん。「つくしてるお」君。「いけしずこ」さん…等々。
名前が付いていることで、のはらのみんなが、自然が、小さな命の輝きが、より身近に親しみ深く感じられます。
詩に対する共感を呼ぶ想いが一層深まります。
そして、版画で描かれることにより、どこかクラシカルで味わい深いノスタルジーを感じるのです。
遠い昔、まだ幼かった頃、夢中で駆けまわった野原の記憶…れんげの花冠の香り・ひんやりとした小川のせせらぎ・夕立の後の湿った空気の感じでさえ、思い出されるのです。
「版画 のはらうた」は、いつ読んでも、何回読んでも、読むたびに心がほんわかして自然と笑顔になれる…私にとって、とても大切な特別な一冊です。
「し」をかくひ / かぜみつる
ゆうべ くりのきのとこ とおったら、さ
みのむしのやつ ないてるのさ
こわいゆめ みたのだって
まだちいさいし、な
むりないよ
おれ あしたのぶんにとっておいた
そよかぜをだして ゆすってやった
みのむしのやつ わらってねむったぜ
あんまり かわいくて、さ
とうとう そよかぜ ぜんぶ
つかっちまって、さ
だから おれ きょう おやすみ
ひまだから「し」かいてるの
「版画 のはらうた Ⅰ」より
「版画 のはらうた」
くどうなおこ と のはらみんな 詩 / ほてはまたかし 版画 / 童話屋