絵本バンクの絵本棚

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おおきなかしの木

マイケル・ジャクソンが愛した広大なネバーランドで一番お気に入りの場所が一本の大きな樫の木だったという。
そこに暮らしていた頃は、見事に枝を張った大木にスルスルと登り、心地よい風に吹かれ、水のせせらぎを聞きながら、いつも曲を作っていたそうだ。


この絵本の樫の木はそれとは違うが、樹齢千年を越えるこの老木も地球の様々な歴史を見てきた。
一粒の実から芽を出し、風雪にさらされたり、動物の住処になったりしながら一年一年を生き延びてきた。
もしも感情があるとすれば(私はあると思う)、愚かな人間の行動に怒り、優しい語りかけに涙したり、微笑んだりしたに違いない。
そんな一本の樫の木の千年にも渡る壮大な物語が時に柔らかく、時に激しく、ドラマチィックに描かれている。
最後は切り株だけになってしまう樫の木だが、一匹のリスが新たな未来を予感させる「希望」の一冊でもある。


ネバーランドの樫の木は、どれ程の美しい声と詩を聴いたのだろうか。
主を亡くしても、ずっと幸せな樫の木であり続けるにちがいない...。


9月の絵本バンクのイベントでは多種多様な個性的な絵本が皆様をお待ちしています。(この絵本は9月のおすすめ絵本として展示予定です。)


  
  
  
  
  
  
  
  
『おおきなかしの木』
エリザベス・ローズ&ジェラルド・ローズ作 岩波書店   

紹介者 空